2012年1月号 特別寄稿
「パリ通信 冬号」
「ユーロ導入から10年が過ぎて」
古賀 順子
暖かい焼きたてのバゲットに美味しいバターとジャムをたっぷり塗って食べる朝食。パリに暮して幸せだと感じる瞬間です。 パリのパン屋さんの数は多く、私が住んでいる5区のアパルトマンからも、歩いて2-3分のところに5軒あります。フランスの物価といつも密着しているのがパンの値段です。 1978年から価格規制がなくなり、バゲット1本の値段も様々です。日本でも有名なモンジュ通りのカイザーは1.10ユーロから、バイオ・パンを看板にしているモヴェール・ミュチュアリテ広場のモワザンは1.05ユーロ、 サン=ジェルマン大通りのラ・パリジェンヌは0.95ユーロ。5フラン(1ユーロ=6.55957フラン)でおつりがきていた当時からは約1.5倍の値段になっています。 「フランからユーロに移行して物価が高くなった」「生活が苦しくなった」というのがフランス人全般の意見です。フランスで生活する私たち日本人にとっても、ユーロの変動は生活に直接影響してきます。
ユーロが導入された2002年1月1日から10年が過ぎました。強い通貨として大きな期待を担い、フランからユーロへ移行しました。フランス中が新しい通貨の誕生に喜んだのを覚えています。 しかし、2008年頃からはフランスでも経済の行き詰まりが表面化し、住民税や固定資産税などが一挙に引上げられました。2007年、2008年までは600ユーロ弱だった私の住民税も、2009年には800ユーロ、2010年860ユーロ、 そして昨年度は890ユーロと加速度的な上昇率です。パン、野菜、くだものなどの食品だけでなく、不動産や賃貸住宅もこの10年で大幅に上昇しました。 パリ市内の25㎡程度のスチュディオでも、1ヶ月の家賃700-800ユーロは普通です。地方からパリに上京してくる大学生や日本からの留学生にとって、パリの住いは大問題です。 今では東京と変わらない生活費がかかるようになりました。
さらにはギリシアの破綻、ヨーロッパ各国の負債によってユーロはどんどん値下がりし、対円レートがこの1月には100円を切ってしまいました。一時は1ユーロ=190円にまで上がったユーロ高から円高へ。 昨年3月の東日本大震災以後、日本へ行くフランス人観光客は激減し、一時帰国する私たちにとってもこの円高では長く滞在することができません。 パリで仕事を始めて13年になります。ユーロが強いときにはお給料がユーロで良かったと思っていましたが、ユーロの行方がわからない不安な今日になり、円建てで貯金しておいた方がいいかしらと思うこともあります。 とはいえフランスを第二の祖国と決めた以上、ユーロを信頼するしかありません。日常の生活感としては、1ユーロ=100円がぴったりするように感じます。固定レートになったら今後の生活設計も立てやすいのにと思います。 世界恐慌のなかでフランスも日本も不安な生活を強いられていますが、円とユーロがバランス良く、安定して存続して欲しいと願います。
おわり
