ベストピア
月刊ベストピア

2012年 1月号 第299号

年賀状

2012年 年賀状

 今年の年賀状です。不思議な英文ですが、私の思いをこめたものです。少し解説を加えます。

Free from Everything

 昨年末に最後の職業であった税理士の資格を抹消して廃業しました。あらゆることから自由になりたかったからです。 人間が社会的存在であることは頭では解っているのですが、わがまま、アマノジャクの性格、的確に言えば、自己中心性の故に人間関係を良好的に継続することは生来苦手でした。 どんな時もどうしたら「自由になれるか」という意識が生活のベースにありました。
 そのお陰で「精神なき専門人」にならずに、多忙と戦い、時間を生み出し、時々に「したいことをする」生活をしてきました。
 税法以外に、
(1)人と組織を結ぶ賃金の役割、
(2)なぜ人は嫌なことが分かっているのに同じような嫌なことを繰り返し、性懲りもなく行うのか(ゲームの理論)を心理学的に研究し、組織と人とが繰り返すゲームの根拠を著作にしたり、
(3)そうした人間の心のカラクリを文明の発祥地メソポタミアのシュメール文明に遡って研究をしました。
(4)大学の卒論の延長線上で「偶像崇拝の終焉」という小論文も書き岩波書店から出版してもらい、いくつかの大学の図書館に納めました。
(5)坂村真民先生との出会いによって仏教の側面からみたキリスト教も学びました。
(6)世界宗教の争いをストップしたいと願い、エルサレムに「平和を願う〈念ずれば花ひらく〉303番碑の建碑と植樹運動を多くの方々にご支援頂いて、ヘブライ大学植物園に寄贈しました。
(7)よく旅をしました。40代は北アメリカ大陸を東西南北縦横に、50代はイスラエルを中心に中近東、60代はユーロ圏とその周辺、お陰で絵画と音楽は常識レベルになりました。
(8)本も十数冊書きました。全国で講演もさせて頂きました。
(9)第九の学習で新しい道も開けました。
 このようにふらっと振り返るだけでも一般の会計人には羨ましがられる程の自由さのある生活をしてきましたが、常に税法という重い鎧をまとっての自由さで、心のどこかに桎梏を背負っていました。
 経験の体系化もできておらず、一箇所で「穴を突つき」又一箇所で「穴を突つき」統合されない体験に空虚感を味わっていました。 生のベースには聖書がありましたので空虚感にも意味を問う姿勢はもっていましたが、感性の納得感には至りませんでした。
 必要なのは時間、時間論を学べば学ぶほど、なにものにも縛られない時間への希求が増していきました。

 生活の不安は、こんな時代ですから誰にでも公平にあります。
 それ以上に欲しいものが、この世の誰にも、なにものにも遠慮することのない自分の時間でした。そんな状況で出てきた言葉が、Free from Everything です。

 Everything is Nothing.
  Nothing is Everything.

(1)この言葉は20年程前に般若心経を学んだことがあり、全体の意味は今でも分かってはいませんが、英訳するとどうなるのかという問を持ち続けていました。 いくつかの英訳も入手しましたが、どれも難しく私の頭ではついていけないと思い諦めました。そんな時に、冬の北海道にいき、白一色の銀世界を前に無限の広がりと深さを感じた瞬間に何も無い世界を同時に感じたのです。 その時、「白と言うのは幾つなのか」理性的な質問が頭をよぎりました。数字(計算と言った方が適切)の世界に生きている性がでるのですね。哀しいかったですが頓智の世界です。
(2)何も無いから零、感じは無限大、零の連続は無限大、無限大は書き表すことはできないから記号とした「零・零」-「0・0」-∞となるのだな~
(3)白寿と言う言葉も有る。なぜ99歳なのか?これも頓智の世界、百-1=99、百の一角をとると白になる。
 白髪三千畳と言う言葉も有った。広大にして無限という意味なんだろう等、私流の好い加減な思考プロセス、然し、何かが生まれるということもしばしばある。 捨てたものではない。こんな屁理屈にも感性は負けず、私の中では白のイメージは無限大=零が浮かび上がり消えませんでした。
(4)「なんでもあるということは、なにもないことである」
「なにもないということは、なんでもあるということ」
 歳を重ねる毎に意味は変わり、深くなります。
 今、ビジネスの世界を捨てて、なんだか無限の自由を得たような気分です。ビジネスの世界は何らかの形で「お金」がからみ、主従がからみます。その制約から解き放たれた新しい年にウキウキしています。
(5)然し、世界情勢は「一日にして有を無にする」状況です。米100グラムが10万円となるのは一日かかりません。 仕事を持つ人にはそのリスクに脅える必要はありませんが、仕事をもたない高齢者、私のような者は、生活保護者になります。それも又、楽しからずやと思える覚悟が今は必要です。
(6)Everything~Nothingの過程で意識的にしなければならないことがあります。整理です。即ち、捨てること。捨てることを覚悟すること。覚悟したら振り向かないこと。この振り向かないということはかなり難しいです。
 人間の執着心は簡単には整理できません。旧約聖書にも「ロトの妻」の有名な物語もモーセに導かれながらも不平を言いながら後ろを振り返る物語もあるくらい古来から「後ろを振り返る」のが人の性なのかも知れません。

 私も年末の大整理に時間がかかりました。妻の基準は「今まで使っていない物は捨てる、迷ったら捨てる」と明確です。 私は「迷ったら取っておく」のですが、これは整理ではなく単なる「置き換え」にすぎません。これは整理の先延ばし、かくして段ボール箱10杯分が自宅に置き換えられ、その整理が新年の仕事始めになりました。
 整理には集中力が要ります。(次号へ)

小原 靖夫