2009年7月号 第269号
アイ・オー・ユー I owe You
これから間違いなく流行する言葉です。
「私はあなたに借りがある」との意味です。
「IOU」という記号で表されます。
7月に入って間もなく米国カリフォルニア州の知事が非常事態宣言をしたとのこと。日本に当てはめれば、どこかの県が、或いは、どこかの市が、
委託業者に支払う現金が無くなることを宣言したということになる。不況で税収が減り(歳入減少)にもかかわらず歳出が増え、財政危機に陥ったわけである。
カリフォルニア州のGDPはカナダ、ブラジルを上回る大きな経済圏である。州政府の支払い手段に小切手や現金ではなくIOUという借用書を発行するということは、
その借用書や州政府の発行している債券の利払いや償還ができなくなれば州政府の倒産です。
毎日のゴミの収集は公務員がやっているのではなく、委託を受けた民間業者がやっています。その民間業者は支払いがしてもらえませんから収集を即時中止します。
国民健康保険もストップしますから、医療は自由診療だけになります。国民年金も支払われるかどうか判りません。こうなった時、誰が助けてくれるのでしょうか?
日本の地方負債は昨年のNHKの報道では200兆円といわれ、今年も増えていることは間違いありません。今年1月6日の新聞報道では、自治体の隠れ(退職金)債務30兆。
これだけを加えても230兆円です。
国は地方公共団体財政健全化法を作り平成22年3月までに一定の評価をしようとしています。しかし、その評価基準たるや民間の感覚はまったくありません。
民間の考えでは収入の範囲で支出がまかなえなくなると借入金をします。常識ある人は借入金を収入と考えることはしませんが、
固定収入から固定支出を差し引きマイナスになると起債というウルトラ手段があります。今の段階ではこれ以上記すことができませんが、
9月頃各市町村では貸借対照表がインターネットで公開されますから、19年度、20年度を比較して分析するとその市町村の財務体質が少し見えてくることでしょう。
日本国家もこれから平成22年度の予算を作りますが、歳入のうち借入金が税収を上回ることが確実視されています。
日本の財政も限界に達したようで、米国と同じように日本銀行が国債を買いまくってお金を印刷するという、本当に究極の選択しか残されていないようです。
この繰り返しは私の知る限りシュメールの時代からありました。結果はハイパーインフレで終わっています。
現代は世界各国が協調するという智慧を働かせることが出来る時代ですから、特にその可能性のある英米の愚かな決断を阻止できる何かがあればと思います。
ハイパーインフレの予兆は長期金利です。じわじわと上昇の足取りを見せ始めていますから注目しましょう。そしてどんな行動をとるか、今からの学習の課題の一つです。
米国の貯蓄率が15年ぶりに6.9%と高水準になったとのこと。1993年12月が7.6%、それ以後は下がり続け、 1995年からは貯蓄率は0%、2008年9月のリーマンショックまで殆ど貯蓄をしなかったらしい。 ローンで買えるものは何でも買った、自動車、キャンピングカー、クルーザー、そして最後に教育資金を借りた挙句の果てに、地価の暴落、担保不足、失業、破産・・・・・
日本が同じ道を歩まない方法があるのだろうか?
日本の貯蓄率は1955年から10%を超えており、73-95年は20%を超えていたが、96年には10%を切り、2000年は8.7%、2002年は5.4%、
07年は3.3%まで落ち込み、最近では0%に限りなく近づいている。
今夏の賞与の減少で住宅ローンの支払いが出来ない家庭が現れ、家を追い出され路頭に迷う人が年末にかけて増えていくようである。
そこに追い討ちをかけるような強毒性の新型インフルエンザが発生したら、国から個人にいたるまでIOUが蔓延したらと思うと、ぞっとする。
こんな中でも元気な会社がある、それも「人に優しい企業」と言われている。無借金の会社である。 技術の優秀性と強い企業体質が忍耐しつつも光を求めて前進できる、これからのリーダー的の会社になっていくことを切に願っているところです。
日本型経営のバージョンアップ
1 話題になった「人に優し企業」
6月15日NHKのクローズアップ現代で、不況に負けない企業の秘密、人に優しい企業の挑戦と題した報道がありました。
この世界恐慌の嵐の中で売上高が80パーセントも落ち込んだにもかかわらず、今年も定期昇給を実施した企業が紹介されました。
物を作る前に人を作る、好況のときに仕事の改善、効率化を集中して行い、投資をせず粗利益をあげ貯蓄し、不況のときに身の丈にあった投資をする。
「好況よし、不況またよし、不況こそ発展のチャンス」を実践されている堅実経営に日本型経営のバージョンアップ版を観ることができると訴えていました。
人の智慧にはエネルギーがあるので、熟練を重視し定年を設けず、後輩の指導にあたるというような人事戦略が、
経営戦略の中にきちんと位置づけられていることが重要であることを学ばせていただいた有意義な番組でした。
2 賃金ダウンの影響
しかし現実には80%以上の中小企業で賃金ダウンの嵐が吹いています。経営者は賃金ダウンという苦渋の選択を、社員にどう納得してもらえるかという問題に直面しています。
受ける側の社員に直接的にどのような影響があるかを体験するために、私はある企業を訪問しました。
この会社は2年連続賃金ダウンを実施して全社員を巻き込んだ構造改革を実践し、今年の決算で目標を達成、当初の約束どおり賃金アップをすることになっています。
面談から得られた談話を要約すると次のとおりです。
- 妻への説明に窮した。夫の威信に傷がついた。
- 将来への不安、優秀な若手が辞めたとき、辞めるに辞められない自分に葛藤した。
- 会社への不信、評価への懐疑心、同僚との比較、不必要なコンプレックスに悩む。
- 家計費の縮小について真剣な家族での討議ができた。特に教育費をどう捻出するか。
- 会社の実情を理解しながらも働く意欲が下がっていく自分に腹立たしさを覚えた。
- 新聞を止めた。本を買わなくなった。自己投資の減少。その他、多数の節約案。
- 生活を根本的に見直す契機となり、実家に帰る。農業に取り組む。車を2台から1台にする等、これからの社会を生きていくうえでの覚悟ができた。
3 企業の使命は存続すること
経営者はこれらのこと、すなわち社員の受ける物心両面の苦痛やモチベーションの低下を知りつつも、企業の存続という究極の目的のための選択をせざるを得ない、
それ故に常に苦悩を背負って日々を送っています。
この会社は赤字会社ではなく、社員から見れば賃金ダウンの必要は考えられない利益をだしていましたが、経営側は自己資本比率を大幅アップして、
長期安定的な経営体質にするとの大英断をしました。そこに至るまでには役員給与の大幅なカット、考えられる限りの費用の節約が実施されていました。
第一回目の賃金ダウンについて、会社を批判する者はいなかったが、第二回目には会社の方針に疑いを持った若い優秀な社員が辞めることなり、周りに動揺の波がひろがった。
しかし、経営陣はひるまず、何度も説明会を開き、理解をもとめ、来るべき不況を乗り切るため、あらゆる対策を講じて、経営基盤を磐石にしたい、会社が存続するために、
皆さんの雇用を守るために協力を要請した。
二年連続利益目標を達成、賃金を二年前の水準に戻すという約束が果たされ、元気な歓声が私にも届きました。
賃金ダウンを体験した社員の心理は、「甘受→諦観→承認→発奮」と推移していますが、発奮に着火したのは、日ごろから経営陣が小さな約束を守っていたこと、
経営陣は何年も前から低い報酬で働いていたこと、率先垂範、目標を達成したら必ず賃金を元に戻してくれると信頼を得ていたこと、常に多くの学習機会を与えられていたため、
建設的な横のコミュニケーションができ、励ましあうことができたこと等の理由があります。この会社は本当に良く学びます。教育費を未来費用と言って感心するほど投資し続けています。
4 「共通理解」を深める評価
この企業文化を醸成するには10数年の時を要し、その出発点は「査定」をやめ「評価」に徹したことにあると、次のようにトップが語ってくれました。
「いくら教育費を投じても評価なくして人は育ちません。人に生き甲斐を与える評価こそが人を育てます。しかし、評価はフィードバックが軸ですから、する方もされる方も厳しいです。」
評価は課題を期首に公開します。これは大きな意味で危機感の共有です。この課題(技術の伝承)に取組むことで会社とそれを取巻く環境についての“共通理解”が深まります。
私は今回の訪問を通じて、日本型経営のバージョンアップとは、多能工化、少数精鋭、段取能力、共通理解、
さら共感的理解という知慧の側面が強化されるものではないかと微かな光に気付いた次第です。
できれば避けたい賃金ダウンですが企業の最優先課題は存続すること、その為にあらゆる対策が必要です。
どんな対策にも共通理解があれば、この困難な時代を乗り切ることができ、その後鮮明にバージョンアップされた日本型経営が見えてきます。
未確認飛行物体
入沢康夫
薬缶だって、
空を飛ばないとはかぎらない。
水のいっぱい入った薬缶が
夜ごと、こっそり台所をぬけ出し、
町の上を、
畑の上を、また、つぎの町の上を
心もち身をかしげて、
一生けんめいに飛んで行く。
天の河の下、渡りの雁の列の下、
人工衛星の弧の下を、
息せき切って、飛んで、飛んで、
(でももちろん、そんなに速かないんだ)
そのあげく、
砂漠のまん中に一輪咲いた淋しい花、
大好きなその白い花に、
水をみんなやって戻って来る。
妻が群読の授業を受け始め、そのテキストの一枚を見せてもらい面白い現代詩を発見しましたので、紹介します。小学校5年生の教科書にも掲載されていることがわかりました。
薬缶は「やかん」と読みます。いい詩にめぐり合いました。この荒れたときに、意味と価値を付けるのは読み手にあります。自由詩のよいところです。
