2007年5月号 第255号
日本が直面していること(その1)
今年は桜の命が長く、菜の花、もくれん、桃の花と春は花爛漫の自然の恵みが豊かでした。
それに反して日本を始め、世界は不幸を重ねる努力を積み重ねているようです。
日本がどうなっているのかを、誰もが感じている常識の範囲でまとめてみました。
愚かに愚かを重ねる今の政治の先に何があるのかを見極めて、これから起こることに覚悟を持って臨む準備に資したいと考えます。
日本が直面することを8つの局面から見てゆきます。08年5月1日を基準にしています。
6ヶ月後にもう一度同じ局面で見て、その変化を検証してみる予定です。
長文になりますので、2回分に分けて一気掲載します。興味のある方は6月号分もオープンしてください。
- 政治の局面では特別会計を取り上げます(5月号)
- 経済の局面では国家の債務を取り上げます(5月号)
- 外国からの影響を取り上げます。まず米国、そして中国の順にします(5月号)
- 中国からの影響(5月号)
- 原油と食糧の高騰(5月号)
- 環境問題(6月号)
- 人口と労働力の問題(6月号)
- 文化教育、日常生活の諸様相(6月号)
- ハイパーインフレの可能性はあるか(6月号)
1.政治の局面では特別会計を取り上げます。
丁度、道路特定財源制度が話題になっています。4月一ヶ月間は石油が26円程度安かったのですが、
5月1日から1ℓ156円になり、その価格は私が5年前から言っているように限りなく1ユーロを目指しています。
この道路特定財源制度が特別会計から一般財源化に移るということで、その話題性が続いていますが、特別会計とは何なのでしょうか。
(1)国家予算には、[1]一般予算、[2]特別予算、[3]政府関係機関予算があり、国はこの3つの予算で、
国民の生命と財産を守ることを目的に作られた組織です。
一般予算は約80兆円で国会で審議され、その収支が発表されますが、特別予算は国会で審議されること無く官僚が握っている予算と言われ、
別名、官僚の闇の財布とも言われます。
その財布が平成19年現在28の特別予算となり、その額は362兆円(ある説では240兆円)規模で、一般予算の3~4倍に達しています。
明確にならないことが、闇がそのまま認められていることを意味しています。
(2)塩川正十郎氏は、一般会計と特別会計との関係を実に見事に表現して次のように言っています。 「母屋に(一般会計)がおかゆをすすって辛抱しているのに、離れ(特別会計)では子供がすき焼きを食べている」 離れの大人は何を食べているかは読者の想像に任せられることになりますが、特別予算が増えると、役人、政治家の不祥事が増えます。 その典型が官製談合です。
(3)特別会計を実際に運営する特殊法人は226、公益法人は25,541あって、役人が定年後に天下ってゆく天国となっています。
今問題になっている後期高年齢者医療制度を作った元官僚は、今では特殊法人で月給100万円もらっているとのこと、
国民の苦しみを吸い上げて、自己快楽を実現しているわけです。
それでも法に守られているので、犯罪ではありません。
昨年アスベスト問題で国民の生命に被害が出ていることがわかり、その対策として独立行政法人、環境再生保全機構ができ、
官僚の天下り先がまた一つ増えました。国民にとって一大事が発生すると特別行政法人ができる、要は闇の予算が作られているのです。
(4)余りの行き過ぎに良心の呵責を感じたのか、ガソリン税の暫定措置を含んでいる道路特定財源を一般財源にしようという気運が高まっていますが、 そのやり方も一気というわけではなく既定の権益との調整を取りながら、長い年月をかけて行われるようです。
(5)この特別予算に日米構造協議というのが、うまくリンクされています。1994年10月米国は自らの双子の赤字を解消すべく、 日本に10年間で630兆円の公益事業をすることを約束させたのです。 内政干渉も甚だしいですが、日本の政治家はこれぞとばかりに特別予算に権限を与え、今ではどうしようもない後生にはおびただしい負の財産が残りました。 箱物をいっぱい造って関係者だけが富を得ていったのです。
(6)このように今の政府は国家の目的を果たしていません。国家の目的とは、国民の生命と財産を守ることです。 一般的にこのような状況になったときは、国家破綻するものです。 国民がよく教育されている為におとなしくしていますが、人口減少という社会現象がその抵抗であるということを、ぼつぼつ政府は知る必要があります。
2.経済の局面では国家の債務を取り上げます。
(1)我国の借金はいくらあるか。なかなか数字がつかめないのですが、08年4月下旬NHKが地方債務が200兆円あるとの番組を放映しました。
保守的なNHKの数字ですから、最低と考えてもいいと思います。
では国の債務は05年末で827兆円と言われていますから、現在少なく見積っても1,000兆円~1,100兆円と考えらます。
これはGDP約500兆円の2倍強になり、これが2015年には3倍になると予測されます。
3倍になったのは1942年2月の預金封鎖、新円切替の時以来ですが、その時我国はハイパーインフレに見舞われ、戦争に敗れ、経済も破綻、
まさに国家破綻のモデルを作ってしまい、マッカーサーの進駐となってしまいました。
今度は具体的な戦闘行為は日本においては無いかも知れないが、世界経済戦争の中に完全に取り込まれ、
包囲されている我国の経済は、自らの手のみならず他国の影響を受けて国家破綻(すなわち、国民の生命と財産を守れない)が起こり得る危険性をもっていると言えます。
(2)忍び寄る増税は、税金という名ばかりでなく、後期高齢者医療制度や年金等社会福祉の美名に隠れて上昇しています。 昨年の定率減税の廃止や地方税の改正でうっ憤やる方なき人々が私ども会計事務所に怒りをぶちまけられましたが、 そのような方に今から申し上げておきますが、消費税アップは射程距離で、年末の税制改正案に盛り込まれますから、 そのときは新聞の記事をよくよくお読みくださることを望みます。
(3)社会保険制度は現役世代が負担するシステムになっていて、2012年からは団塊の世代の人々が、 保険料の支払者から受給者に変わり始め、5年後の2017年それが完全に移行することになります。 消費税が大幅に引き上げられるか、国の債務が更に増加するか、或いは同時に起こるか。恐らく後者の道が選ばれることになるでしょう。
(4)本年の企業倒産件数は15,000件を超える勢いです。大企業の繁栄の陰で、小零細企業が倒産しています。
給与格差も著しくなり、早晩日本版サブプライム問題も発生するでしょう。
日本の住宅ローンはまだ証券化されてはいないようですから、米国のように外国にまで迷惑をかけることは無いにしても、
住宅ローンを支払えない人々が増加し、金融機関も少しは困ることになるでしょう。
医療も十分に受けらず財産も守れないようになると、もう国家とは呼べないのではないかと多くの人々が実感するでしょう。
3.外国からの影響を取り上げます。
まず米国、そして中国の順にします。
(1)米国の対日貿易赤字減らしに協力する為に、日米構造協議を幾度となく受諾しています。 前述しましたが、1994年10月には10年間で630兆円の公益事業を行うこと、米国企業の国内事業への参入の道を開くこと等々の内政干渉を受けてきました。 その結果、特別会計の権限が増加し、今日の状況があるわけです。
(2)では米国の赤字はどの程度あるのかといいますと、経営収支(貿易)の赤字は06年でGDPの6.5%で過去最悪となったこと、
更に5年連続で5%の赤字が続いている。
米国のGDPは14.0兆ドル(二位は日本の4.2兆ドル、三位はドイツと中国が並んで2.9兆ドル、世界の合計は55兆ドルです)。
14兆ドルは円換算して1,400兆円、そのうち5%は70兆円です。日本の国家予算(一般会計)は80兆円ですから、その赤字数字の大きさは驚きです。
財政赤字は6兆ドル(600兆円)と言われていますが、これを疑問視するのは常識となっていて、
日本の二倍として2,000兆円、三倍として3,000兆円はあると推測されています。
今回のサブプライム問題で、住宅ローン残は1,200兆円という数字が明らかになっています。
住宅の値上がりを見越して将来の含み益を担保に自動車ローン、クレジットカードローン、
学生の授業料ローンなどで800兆円もあるということですからすごいです。人口は日本の二倍ですが、05年の個人破産は204万件ということです。
(3)米ドル安で一時100円を切りましたが、世界の協力を得て5月1日現在では、104~5円で一時的な落ち着きを見せています。
米国の基礎力(ファンダメンタルズ)が改善されたわけではありません。
米国のサブプライムで傷つけられたEUも物価高で市民は苦悩していますが、基礎力を着実に着け対米ドルでは、1.56倍の強さにまで成長しています。
EU27ヶ国のGDPは15兆ドルと米国を抜いています。
EUは07年12月13日、リスボンで新基本条約が調印され、政治統合が加速されることになり、
09年元旦にはEU大統領の誕生も視野に入っているようです。
以下は私見ですが、一般的に世界の覇権は米国から中国に移ると言われていますが、
中国は後に見るように米国とカップリング状態にありますから、奇蹟が起こらない限り米国と運命を共にすると考えられます。
すると、その時が来たら世界の覇権が消滅するのではなくロシアへの可能性もあります。
これを阻止するのがEUの役割ではないかと考えます。従って基軸通貨がドルからユーロに徐々に変わっていくように感じられます。
(4)グリーンスパン元FRB議長は、米国の経済状況を「スタグフレーションの初期症状」と言っていますから、
デフレ下での激しいインフレが始まろうとしています。
今、米国は長期金利を引き下げて自国民を支えていますが、ドル安、株安、債権安の危機は解消していません。
ドルの崩壊は日本と中国を直撃します。中国はドル資産をユーロや他の通貨にシフトし始めています。
各国(特に中東諸国)で政府系ファンドを創設しているのは、同様の動きを進めるためです。
4.中国からの影響。
(1)中国は米国とカップリング状態にある。
中国の対米貿易黒字は世界最大であり、中国の外貨準備高は1.6兆ドル、その全てが米国ではないかも知れませんが、
GDP2.9兆ドルの55%に相当するようです。
(2)Bricsの中心である中国に投資しない者は馬鹿呼ばわりされるほどに、世界からの投資マネーが大量に流入し続けているようです。
中国内では企業も個人も借金をして株を買っている(株は上がり続けるものと信じられている)。
なかでも、沿海部の共産党員が中心になって投資をし、利益を得て内陸部の人々との所得格差は激しいものになっています。
05年、11,000人の党員が横領や賄賂罪で処分されている。
その規模はGDP(2.9兆ドル)の3~5%と言われ、なかでもキックバックは1.5%を占めるとの資料もあります。
その意味するところは、超膨大なバブルが形成されているということで、それがいつ弾けるかは誰もが注目しているが、
北京オリンピックまで又は上海万博までは大丈夫との考えが優先で投資が続いています。
(3)深刻な砂漠化の被害
自然環境の変化も加わり砂漠化が進み、国土の18%(日本の面積の4.6倍)が砂漠となり、4億人に被害が出ている。
黄砂で被害が全国に及んでおり、02年北京では太陽光が遮られ、28℃の温度が12℃まで急降下した日があると言われている。
06年4月北京には、33万tの黄砂が降り国民の健康被害では何十万人もの人が死亡し、経済損失はGDP8~12%に及んでいる。
5月になっても砂煙はやまずに至るところ砂漠のようになっています。
グリーンGDPでは、すでにマイナスになっています。すなわち経済成長がもたらす利益以上に環境破壊による損失のほうが大きくなっているようです。
これは越境汚染となっており、02年福岡空港では黄砂のため視界不良でダイヤが混乱したことをはじめ、日本各地で被害が出ている。
特に雨は酸性雨となり、被害の度合いを広げ深めています。
(4)水の汚染は想像を絶する
中国環境保護総局の発表によると、都市を流れている河川の90%は重大な汚染状況にあって、
農村部の30%の人々は飲用に不適な水を飲んでいる。
工業用水の1/3、生活排水の90%は未処理のまま河川へたれ流し、長江には年間256億t、黄河には40億tの汚水が流入。
長江と黄河の間を流れる淮河は工業用水にも灌漑用水にも利用できず自己浄化能力はなくなっている。
地元の魚民は獲った魚を食べる勇気もないという。
中国全土の7大河川は重度の汚染で7~8億人が汚染された水を飲むと言われている。
重慶は空気と水ともに最悪の汚染度(二酸化硫黄濃度は他の都市の平均2.4倍、降雨の40%が酸性雨で肺がんは1位)、
農村に防毒マスクを配ったとも言われている。
(5)食糧問題
一人っ子政策下でも人口は増加している(出生の男女比は男子1.2に対し女子1と人口バランスが崩れています。将来少子化との合併症が心配されている)。
農業は輸出国から輸入国に変化しつつある。農薬の乱用が騒がれ、中国系ビールの95%にホルムアルデヒド、重金物質が検出されるという。
(6)北京オリンピック
上記のような状況で国内暴動も多発し、05年その件数は78,000件という。
本年はチベット問題が表面化し、国際世論が騒然とするなか、いよいよ北京オリンピックまであとわずかとなりました。
ひたすらその開催と実施を祈るばかりである。
ただ気になるのは新型インフルエンザの蔓延の度合である。
3月12日、香港でインフルエンザ感染拡大を防止のためか、幼稚園、小学校が臨時休校した。
死者4人、700人以上が感染したといわれる。非常にナーバスになっていることは確かである。
加えて5月12日の四川大地震は、北京にとって是となるか否となるか国際社会が注目しているところです。平穏無事に終わることを念じてやみません。
5.原油と食糧の高騰。
資源を持たない国でこれほど経済成長した国もないのが日本である。 それほどに何かに優秀性があったわけであるが、ここにきてやっとその危機感が語られるようになった。
(1)原油は高騰を続ける
今年の初め、$100をつけた原油は今$150を目指して徐々に上昇中である。
我国では、4月1ヶ月間暫定税率のお陰を蒙ったが、5月からは160円と限りなく1ユーロを目指して上昇してゆくと思われます。
一説では年末までに$200という恐い予想もあります。
(2)食糧自給率39%は改善されないのか
1965年(昭和40年)に73%あった食糧自給率(カロリーベース)は05年に40%まで落ち、最近では39%と言われるようになった。
オーストラリアは200%以上、カナダ145%、米国128%、フランス122%、英国でも70%である。日本は主要先進国の中で最下位いである。
(3)世界の人口は66億人増え続けている
1日20万人のペースで年間8,000万人が増加している。これは世界的な食糧不足の時代の到来となる。
加えて中国、インドでは消費拡大と共に食料の質的変化(ヘルシー食や日本食がブームになっている。白身魚等)は、輸入国日本にとっては脅威となっている。
食の安全保障(food safety)は異常気象によっても脅されている。オーストラリアの干ばつで小麦被害。
それを応援した米国も打ち続く自然災害の発生で小麦が象徴的に全世界で食糧が高騰している。
(4)代替エネルギーエタノールは穀物の減少と価格の上昇をもたらす。原油よりも効率が悪いがブッシュ大統領の一声に世界は踏っている。
いずれにしても、資源のインフレが待ったなしにやってくる。農業政策の大改革が望まれています。
以下次号
