2008年3月号 第253号
現実を直視する
今年は歴史的な観点から壁シリーズを企画しています。 歴史を見ていきながら現実を抽象してみたいと思っていましたが、現実の動きが物凄く早く、その暇もなくなりましたので今号では直視を試みます。 素より政治経済には疎いところがあり、データーも十分ではありませんので、専ら経験と直感を頼りに記していきます。
(1)102 103 104
去る2月14日久しぶりに人前で話をさせて頂いた。要旨は次のようなものでした。
元旦をウィーンでむかえ、現地の新聞やテレビを見て感じたことは、
08年の前半は102即ち100ドル/バーレルを突破する原油、1ドル100円を突破する円高、
103即ち1,000トロイオンス/gの金価格、104即ち10,000円及びドルの株式のマーケットが予測されます。
しかし現実のスピードは更に速く3月中旬には、原油は110ドル、円高は90円台に突入しており、
金も1,000$に触れてしまいました。株価も10,000を伺う危険性があります。
新聞の見出しには、株安、円高、原油高の三重苦が日本を襲っていると報道されています。
(2) 資源の乏しい日本はどうなるのか
原油高は物価高に直結していますから国家的な対策が望まれていますが今のところは何も期待できないようです。 暫定税率さえ決めるのに何故か時間がかかっています。国民のことよりも一部の特権階級の利権を手放したくないという政治現象がみられます。 官僚を含め政治家にはマックッス・ウエーバーの『職業としての政治』をもう一度学びなおして欲しいとおもいます。 全く持っていないに等しい原油をエネルギー源にしていること、食料自給率40パーセント(12パーセントは家畜の肥料)の国ですから、 円高で輸入できることは望ましいが、それを上回る物価高を仕掛けられるとひとたまりもありません。 ましてや今の現象はドル安、それも深刻なドル安、即ち米国経済の疲弊の深みから来ていることですから、自国の努力など全くありません。
(3)104の株安になったら
11,000円の可能性は報道されていますが、今の政情を見ていますと、104になってもおかしくはありません。
株式市場の70%は外国人株主といわれていますから、日本に魅力を失ったら早々に引き上げられるかも知れません。
ヨーロッパの共通通貨としてのユーロが力をつけていることは後に述べますが、アジア共同体の構想がチラッと福田首相からでたことがありますが、
アジアの証券市場の覇権を東京がとれるかどうかが微妙になっていくでしょう。
砂漠の国ドバイが中東の証券市場を形成しようとしています。
米国ではシカゴの商品市場がニューヨークの商品市場を合併することになったことも報道済みですから日本の独自性を強くしてその存在価値を示していかなければ、
国外から、円の危機を作られてしまいかねません。大隈重信が作った円の危機を如何にして乗り切るか国民的な課題です。
(4)103と金価格
1,000ドル/トロイオンスは金の価格の上昇の話です。その瞬間を三菱マテリアルの公開Webを紹介します。
・2008/03/18
3月17日の海外金相場は続伸。ドルの下落を眺めたファンド筋の買いに値を伸ばし、COMEX4月限は前日比+3.10ドルの1,002.60ドルで終了、 期近物の終値ベースとしてははじめての1,000ドル台到達となった。日中取引レンジは1,000.00~1,017.50ドル。
・2008/03/17
3月14日の海外金相場は続伸。COMEX4月限は前日比+5.70ドルの999.50ドルで終了し、終値ベースで最高値を更新して引けた。 日中取引レンジは992.30~1007.50ドル。電子取引では午前中に一時1009.00ドルまで急伸し、取引中の最高値も更新した。 この日、証券大手のベア・スターンズがJPモルガン・チェースとニューヨーク連銀から資金供給を受けることを発表すると、 世界的な信用収縮懸念が高まり、ドルが対ユーロで最安値を更新し、米株価も急落した。 これらを背景に、安全資産としての金への逃避買いが膨らんだ。この日のドル円は一時98.91円まで下落し、17日朝現在は96円後半で推移している。 米株価は幅広い銘柄に売りが入り、ダウ工業株30種平均は前日比-194.65ドルの1万1951.09と急反落して引けた。
・2008/03/14
3月13日の海外金相場は急伸。COMEX4月限は前日比+13.30ドルの993.80ドルで終了した。 取引時間中に一時1001.00ドルを記録し、史上初めて1000ドルの大台に乗った。時間外取引でも一時1001.50ドルの史上最高値をつけた。 ドルが最安値をつける一方で原油相場が最高値を更新したことでインフレ懸念が高まり、金に投資資金が流入した。 ドルは対ユーロで過去最安値を更新し、対円でも約10年ぶりに100円を割り込む全面安の展開となった。 米投資大手カーライルグループの子会社が資金繰り難に陥ったことで信用懸念が高まり、ドル売りが進行した。 また、このドル安を受けて現物資産へ資金を逃避する動きが進み、原油先物は4日連続で終値ベースの過去最高値を更新し、取引時間中に史上初めて111ドル台に乗せた。
上記3月14日の記事は歴史に残るでしょう。
日本ではg当たりの価格が発表されますが、その決定公式はつぎのとおりです。
1トロイオンスのUS$価格 ÷ 31.10347 × ¥/$為替 = 円/g価格
その推移を前記のホームページから引用すると上のグラフになります。
赤の線はgあたりの日本円、青の線はトロイオンス当たりUS$、青線が右上がりなのに赤線が下がっているのは、円高が原因です。
この状態で円安になると日本国内での金の価格は更に高騰します。それは恐ろしいことだと私は考えています。
数字のゴロ合わせの面白さですが、次のような仮定で単純化すると判りやすいかもしれません。
1トロイオンス――1,000US$
円/US$――100円とすると、日本国内での1g当たりの価格は 3,100円。これに消費税5%を加算して3,226円。
円/US$――105円になると――3,429円
円/US$――95円になると――3,102円
円/US$1円差で32.7円動きます。ここでは金の価格を例にとって円高でも輸入物価が上昇することを見てきました。
(5)EUR/US$
2002年の正月、ヨーロッパでのユーロ通貨の切り替えの瞬間を見たいと思いイタリアを旅しました。
元旦にシチリアからミラノに移動しました。南イタリアの農村部の人は物価高のテンポが速いことに恐怖感を覚えていました。
その時、1US$=0.903EUR位との記憶があります。10%ほどUS$が高いところから切り替えが始まったのですが、
今では1US$=0.65EUR、即ち、1EUR=1.57US$と僅か6年の間に大逆転しました。
米国経済の疲弊の状況がよく現れています。EU圏の物価高についてはベストピア251号にも記したとおりですが、
それに加えてのドル安が進んでいます。米国社会の深刻さから悲痛な叫びが聞こえてきますが、その影響をもろに受ける日本の将来や如何にです。
(6)スタグフレーション
不況下の物価上昇現象になってきました。最近の小麦価格の高騰で解りますように、食料自給率の低いわが国は、 その不安定な供給と高い価格での輸入に甘んじなければならない状況にあります。 賃金の上昇はごく一部の大企業に限られていますから、消費は伸びず、景気は更に下降してゆくようです。 金利の上昇も期待できないので、年金生活者も苦しくなります。 この15年間の低金利時代に幸いにも物価は安定していましたから、年金生活者からの苦情も取り上げられることは有りませんでしたが、 局面が変わりつつありますから更なる忍耐と工夫の時代が到来しそうです。
(7)縮み志向
これは我々日本人の得意とするところです。質素倹約勤勉はピューリタニズムの代名詞ですが、我々はそれに忍耐を加えることができます。
これは強みです。地球温暖化対策の実施はエネルギーの消費を抑制することですから、経済はマイナス成長を前提にしています。
家計は苦しくなりますから、必然的に飽食からの離脱がおこります。
病気になることもできません。智慧が働きゆきつくところ、弁当の復活です。
それも豪華なものではなく質素にして満腹感と栄養のあるものが望まれますから、日の丸弁当の復活です。
(憲法の改正は望みません)米と梅干しに鰹節を醤油にまぶして、だしじゃこを粉にして振りかけますと、栄養も採れます。
日替わりにシャケ弁、のり弁が考えられます。タンパク源として玉子焼き、にぬき卵を付け加えます。この弁当は体に害を与えないことで、
今よりも健康が増進されますから病気も減少することになります。
ガソリン代の高騰で、歩くことが当たり前の社会になります。これも健康的な生活スタイルです。
米が主食になりますから、減反が解消されます。家庭菜園も盛んになります。近隣での物々交換が始まります。地域内での助け合いの精神が芽生え成長します。
こんな発想ができる自分をとても幸せに感じています。しかし、できることならこんなことにならないほうがいいと感じています。

